楽譜の違い
あっという間に7月ですね。
梅雨でジメジメしていて、ピアノ様には過酷な時期。
レッスン室の除湿機はCORONA製…。
パワフルに大活躍してくれてます。
天気も悪いし外出も気をつかう世の中なので、最近けっこう読書しています。
先日、「ショパンの楽譜、どの版を選べばいいの?」という本を読みました。
とても興味深く面白かったです。
実は楽譜は、同じ曲でも出版社や校訂者によってかなり違うことがあります。専門的な言い方をすると、エディション(版)の違いです。
運指はもちろん、強弱、フレージング、音そのものが違うこともしばしば。
特に悩まされるのが、バッハ、モーツァルト、ショパンです。
初心者の方がよく使うのは名曲集で、いろんな作曲家の代表作が一冊にたくさん入っている楽譜です。
でももう少し踏み込むと、代表作以外も弾く機会が増えます。
そうなると、バッハのインベンションとか、モーツァルトやベートーヴェンのソナタ集とか、もう少し専門的な楽譜も必要になってきます。
最近は著作権が切れた古い楽譜はネットで無料で入手可能なので、ほしい楽譜だけダウンロードして曲集は買わない方もいらっしゃるかもしれませんが…。
とにかく、クラシックピアノはもともとヨーロッパ発祥ですが、いまや世界中の人が弾くので、世界中のあらゆる出版社から楽譜が出ていて、中身が全部違うのです。
その中でも、まずざっくり分けると、原典版と校訂版(解釈版)で大きく違います。
原典版は、作曲家本人の書いたものを尊重した楽譜で、弾き方や運指など本人が書かなかった事は基本的に書いてありません。
それに対し校訂版は、作曲家の楽譜をもとに、校訂者おすすめの指遣いや、装飾音の弾き方やフレージングや強弱やペダルの踏み方など、いろいろ親切に書き込んでくれている楽譜です。
この場合、校訂者によって意見が違うのは当然で、楽譜によって演奏もだいぶ違ったものになります。
また、原典版の中でも、違いがあります。
なにせ、作曲家の自筆譜を再現するといっても…
皆さま、作曲家ご本人の自筆譜を見たことありますでしょうか。
めっちゃ、読みにくいのです。
例えば、このショパンの楽譜。
いや、全然読めないですよね。。
こんなのから、現代の楽譜を作り出す研究者たちの熱意…本当に尊敬します。
しかも自筆譜は一つじゃなかったり、本当に本人のものかすら定かではないものも。
各出版社の校訂者が、当時のあらゆる資料をかき集めて議論を重ね、並々ならぬ努力の末に、それぞれ出版しているんです。
ショパンの場合、最近はエキエル版と呼ばれるナショナルエディションが主流ですが、これがとても高い。。
以前はパデレフスキ版が主流でした。
これは安価で手に入れやすかったのですが。。
この本には、ショパンはなぜエディションによる違いがこんなにもあるのか、どう違うのか、どう選べば良いのかなどが書いてあり、とても参考になりました。
私は職業柄、原典版と校訂版の両方見比べたいし、同じ曲のエディション違いの楽譜を揃えたいところですが、経済と本棚を圧迫するので悩むところ。
普通は、厳選した校訂版が一冊あればいいかと思います。
原典版は、基本的な奏法がわかっていて、本格的に学びたい上級者におすすめです。
いまやYouTubeやSpotifyなどで、同じ曲を違うピアニストで聴き比べるのも簡単にできる良い時代です。
同じ曲を弾いているのに、人によって全然違いますよね。
もちろんピアニストの個性もありますが、それ以前に、使っている楽譜が違う事も理由の一つかと思います。
ショパンの曲でみんなが好きな、ノクターン第2番(op.9-2)、幻想即興曲などに別バージョンがある事を知る人は少ないかもしれません。
また、いまや世界中で大人気の幻想即興曲やノクターン嬰ハ短調などの遺作(生前に出版しなかった作品)を、ショパン本人は破棄してほしいと言っていた事も。
有名なエチュード第3番(op.10-3)の「別れの曲」というタイトルは日本人が勝手につけたもので海外では通じないという事や、最初の速度指定がvivaceで、もともとは速い曲だったという事も。
業界では有名だけど、一般的には案外知られていない事、結構あるのではないかと思います。
専門的な内容ですが、読みやすかったので、ショパン好きの方にオススメです。
結局のところ、どのエディションも絶対ではなく、今後の研究でまた流れも変わるかもしれないので、
最終的に選ぶのは自分なんですよね。
きっと、これからもエディションには悩まされることでしょう…。
輸入楽譜も、もう少し安くならないかなぁ〜。
今日もスリッパ温めてます。
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